2016センター講評 (数学中心)
センター試験の当該年度の問題の難易は、基本的に前年度の結果を調整する形になるのが通例であり、今回もその通りのパターンを踏襲している。
(1) 数学については、昨年度は数学ⅠAが易化、数学ⅡBが始まって以来の低平均点
となる大幅難化したことを受け、今年度の数学ⅠAの難化(分野的な扱いを含め)、
数学ⅡBの易は織り込み済みである。
今年度の数学の出題で特に強調したいのは、問題の難易でなく数学ⅠAにおける
分野別の出題割合である。
高等学校数学の学習内容から、数学ⅠAの出題分野を分類すると鮮明になる。
➀ 直観性を重視する立場からの図形(幾何)を扱う問題
(⇒数学ⅠA 第2問[1]、選択第5問)
② 高校数学の王道と位置付けられてきた関数やグラフ(解析)を扱う問題
(⇒数学ⅠA 第1問[1][3])
③ 新学習指導要領の目玉として位置付けられた、論理・確率-条件付き確率・
整数(代数)、データーの分析(情報数学)を扱う問題
(⇒数学ⅠA 第1問[2]、第2問[2][3]、第3問、選択第4問)
ただし、第2問[1]の図形と計量については、幾何分野に入れてある。
この結果を問題の量で見ると ③2題+選択1題 > ②2/3題 > ➀1/3+選択1題、
配点では ③45点+選択20点 > ②20点 > ➀15点+選択20点 となる。
以上から、新学習指導要領の目玉分野が中心に据えられていることがわかる。
今までも出題されていた論理や確率分野は当然として、整数問題では不定方程式や
n進法の出題と難易、データの分析の問題では、ヒストグラム・箱ひげ図・散布図
の読み取り、箱ひげ図を描くための指標、散布図を見るための指標をもれなく出題
することで、高校での学習の方向性を変えるという強い意志が読み取れる。
ただし、数学ⅡBの分野の中心として②の解析分野の出題を明確にすることで、
数学ⅠAとⅡBの学習内容を住み分けさせバランスを取ろうという意図も見える。
- 全国平均 50点 (16点・12点・12点・10点)
ただし、上位層は昨年並みの得点と考えている。
数学ⅡBには易化は当然だが、1つ1つの問題が良問のため思ったほど得点向上に
反映されないという残念な結果になった。
➀ 第1問[1]は、よく出題してくれたと思う。整関数から初等超越関数へという
質的な飛躍をグラフの視点でとらえる上で大切な知識である。
② 第1問[2]は、三角関数のグラフの周期性を解の個数を通して考えさせるもの
で、➀と同様の趣旨から大切な知識だと考る。
③ 第2問は、設問の仕方が今までと異なっていることと(2)の共通部分を正確に
つかまえられるかでやや難といえる。
④ 第3問の数列は、私の予想通りの群数列の問題だった。
しかし、最近の出題傾向なのか出題者側の工夫が強く、その分問題の意味や
理屈を読み取れない度合いが大きく、昨年同様面倒で難しい問題だった。
ただ、漸化式の解法を中心とした問題(周期性や誘導)設定にはいささか辟易
していたので出題の仕方としては、新学習指導要領的だと考えている。
⑤ 第4問のベクトルは、基本的な出題内容で誘導もあり取り組みやすかった。
数学Ⅱ・Bは、昨年度、今年度と出題内容や方向性は非常に良い問題だと思う。
ただ、60分間でやらせる問題としてはどうだったか、あるいは今年度の第4問の
ベクトル問題と」同じレベルの問題を最初に持ってきたらどうかなど、出題者側
に高校レベルの試験問題の構成少し慣れていただきたいという希望は持っている。
- 全国平均 47点 (13点・13点・8点・13点)
ただし、上位層は昨年に比べてかなり改善するものと思われる。
(2) 国語は、昨年度の難化を受けて今年度は当然のごとく易化した。
今年度と昨年度の2年間の平均点が出題者側が理想と考えている平均点の幅に
あり、うまくレベルを調整したと評価したい。
(3) 英語は、筆記はほぼ昨年並みだが、リスニングは出題の仕方から上位層以外
で大幅に得点が低下するものと考える。
(4) 理科は、昨年のような「物理>生物」の差がなく難化した化学を挟んで物化
選択者と化生選択者の有利・不利がない穏健な得点分布と思われる。
(5) 社会は、各科目間に差はなく穏健な結果だった。
以上から、今年のセンター試験は全体としてみると「数学」特に数学ⅠAの結果
が上位層の総合点に影響を与えそうだと考えている。
なお、総合点の平均点は文系・理系とも昨年よりやや低下するものと思われる。
この傾向は、中・下位層で顕著と思われる。
リスニングの平均点はかなり低下するため、リスニングを大きく換算する大学へ
の受験者は注意したい。
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