一橋大学問題分析
120分 5題 商250点 経済260点 法180点 社学130点
数学は「文系なのに大問5題、数学で失敗したら合格が難しいな」なのでしょうか。
2009年経済に合格した男子は3完+αで4完レベルの得点でした。やはり数学ができるといいなと思ったのもつかの間で、2012年法学部に合格した女子は0完です。この年は一次変換の文系版が第3問に出題された年で、問題の構成が今年とほぼ同じでできる問題とできない問題とに2極分化、250点満点の勝負が半分の125点満点の勝負になりました。その上、法学部志望者は数学ができないのもよかったのかもしれません。
今年度も各塾の分析はいつもの通りの2極分化試験でした。普通の受験生にとって、数学では差がつかない試験になったのです。とはいえ、一橋ですから仕掛けはきちんと設定されていました。すなわち、一橋合格するための数学の要は、取れる問題で確実に得点できたかです。今年度の問題に関して、その辺を分析してみましょう。
第3問は時間内で考えるのは全く無理で、第2問もそれほど得点は望めません。第4問はベクトルの最大最小は幾何的に答えを予想ということがわかっていれば (1) は正解できるのですが、どうだったでしょうか。これから、合否の分かれ目は第1問と第5問だったことになります。この2問をどう解いたかが明暗を決定的に分けたように思えます。
第1問は離散的な問題のパターンを最もよく踏襲した問題で、(1)で問題の意味を、(2) で数え方の仕組みの理解が要求されました。いずれにしても、(1)と(2)はよほどのことがなければ解けるでしょうが、(3)の完答につなげるためには(2)で数え方の規則性を考えた解答ができたかどうかが問題になります。この手の問題では、「数え方の規則性が一般化という形で後半の設問で問われるため、その前段階で単に数えるだけで正答が得られても、仕組み(規則性)が見破られていなければ、次の設問の解答にはつながらないのです」。そのため、答えに注目するのではなく、どのようにして答えを求めたかという仕組みに注目して考えることが必要になります。確率漸化式系の問題で多用される典型的な誘導問題といえます。
第5問は、[1] のシグマの計算と[2] のデータの分析の選択が明暗を分けました。
というのは、[1]は(1) はできても(2) の等比数列系の和を求める公式を導き出す計算の活用を見破れないと解けないため、得点率という点でセンター試験の焼き直し的なレベルで何とかなった [2] を選択した受験生のほうが得点率が高くなったと思います。
以上から、第1問の(3)ができたかどうか、第5問でどちらを選択したか、第4問の(1)で部分点につながる答案記述ができたかということが、合否を分ける岐路になったと判断しています。私の関係した受験生は 第5問では、[1] を選択 (2) で苦戦しています。
また、受験生4人の生徒の数学の得点予想は 「3問弱A>B>C>D 1問弱」でした。合格は数学の得点下位のC , D の二人でした。一番できたA君は商学部志望で2完+αで3完弱でしょうか。世界史が致命的にできないことと英語が1問難しかったことが原因で合格できなかったと思われます。次の、B君は法学部志望で1完+αで2完レベルでしょうか。彼は、少なくとも社会は標準レベルですから、法学部レベルで考えると英語が足りなかったのでしょう。C君は商学部で0完で合わせて1,5完分、最後のD君は経済で0完で全部合わせてせいぜい1完程度です。ただし、D君は英語がかなり強いです。
このようにみると、数学の爆発力のあるレベルの生徒にとっては一橋の数学はもってこいなのですが、できる程度の生徒では英語や社会の差を埋めるのに苦戦するような問題構成だということを、改めて知らされた今年の試験でした。結局、わかりきったことですが、数学ではそれほど点数の差が開かず他の科目によって合否が決まる傾向が強い中で、数学の試験をどのように組み立てていくかが一橋攻略のポイントといえます。
(適塾横浜)
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