直観力から論理的思考力

直観力から論理的思考力

2016年10月05日(水)12:33 PM

 このブログを通して、私が直観力を否定していると誤解してほしくありません。この点、最初にお断りしておきます。
 小学校・中学校時代に、必要以上に「数学的厳密性」に基づいた指導を強調すると、数学の持つ面白さや親近感、奥の深さをのぞき込む興味・関心を遠ざけてしまう恐れがあります。
 例えば「数」に関しては「自然数・整数の問題」、「式や計算」に関しては「分配法則・交換法則・結合法則の働き」や、「素因数分解・剰余の問題」、「図形」に関しては「対称性・図形の構成理論(オイラーの多面体定理)」などです。
 今でも、場合の数や確率に関する問題で常識力を問わない場合は、小学生・中学生・高校生の間で一定のハンディを与えるとほとんど変わらない得点力(高校での能力別クラスでもこの分野の外部模試の平均点は、ほとんど変わりません)が得られます。
 一方、「図形の証明問題」は、昔から最も能力的な差が出やすい分野で、「数学(幾何)ができる人は頭がよい」といわれています … … … 。
 私が昔読んだ「灘中学の数学授業」に関する文庫本では、中学に入学して学習する内容が書かれていました。
 そこでは「証明の仕方」ではなく、「図形の構造や対称性が果たす役割」という観点での図形の学習が強調されていたことを覚えています。
 私は、文部省の検定教科書を含めた日本の多くの中学校での図形の勉強に関して、なぜBC4世紀頃のギリシャ人のまねをして小・中学生に証明させなければいけないのかと、証明を学習する時期と学習の取り上げ方に疑問を感じています。
 これに対する志賀先生の考え方は明快で、抽象性を扱う大学での数学の学習ではこのような図形問題は一切取り扱わない、さらに「証明」について教えるとしたら、学習する時期をもっと遅くしたほうがよく、証明だけの問題であれば疑問を持ちやすい「整数問題」を扱えばよいと考え方です。
 志賀先生は、このことを今回の新学習指導要領で「整数問題・剰余・n進法…」が取り上げられる15年前にすでに提唱しておりました。
 ここまでで、小中学生に「直観力」を養成する学習指導を私が全否定しているわけではないことがわかっていただけると思います。
 実際の学習指導で問題となるのは、直観力の養成から論理的思考力の養成へのつなげ方です。
 この部分の学習指導が各学校で指導されている数学科の先生方の腕の見せ所になると考えています。
 中高一貫校での数学の教育力の一つの見方として、この点にスポットを当てて考えてみるとわかりやすいのかもしれません。



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