慶應大学医問題分析
数学 100分 4題 150点
第1問は、(2)の絶対値の処理は、本当に意味が分かっていないと苦しい。
第2問は、東大レベルを解きなれている人にとってはわかりやすい「操作T」の問題でした。例年同様の設問だったのですが、問題文も短く題意を読み取るのにそれほど苦労しなくて済んだようです。
第3問は、(1)の変曲点をもつことの論証は、最も理系らしい設問で微分計算がどうあれやるべきです。(2) , (3) は時間との戦いというところでしょうか。
第4問は、慶應医でこういう問題が出るのかとちょっと見直すような問題でした。無限級数の形で内積と距離が定義されているので「無限次元のユークリッド空間」が出題の背景にあるようです。設問の展開は別にして、ついに「数学の問題」を出題したぞという驚きで一杯です。
定番の第2問が易化したことと第3問は力技ということで、全体に例年よりは扱いやすかったのではないでしょうか。第4問は時間の許す範囲で楽しむ問題だと思います。
英語 90分 150点
第1問は、空所補充問題で「小惑星の衝突の可能性」についてでした。自制を中心とした文法知識、そして標準的な単語や語法の知識が問われた問題です。一部紛らわしい選択肢がありましたが、完答を狙いたい問題です。
第2問は、総合読解問題で「代替エネルギー」についてでおなじみの環境問題がテーマで、選択肢は標準的なものばかりでした。また、完答したい和訳問題では訳語の選択がカギになりますが、内容がしっかり把握できていれば自ずと解答できるレベルです。
第3問も総合読解問題で、出題文は「外来生物」についてでした。第2問と同様に訳語の選択が鍵となる出題でしたが、京都大学と同様に本文のメッセージがつかめていれば容易だったでしょう。最近新傾向問題としてみられる「正誤ABC問題(選択肢のうち本文の内容に合致する・合致しない・どちらとも判断できないを選ぶ問題)」が今年も出題されていました。文の各パラグラフで述べられている内容を端的に理解していないと、もう一度本文をすべて読み直す以上の労力が必要で、過去問対策を通して習熟していなければならないきわめて知的持久力が要求された問題でした。
第4問は、例年通り自由作文で、今年は「お金で買えないものを絶対に買うことができたら何を買うか」という問題でした。この題意の把握を誤ると致命的です。80~100語の分量指定なので、題意に要求されている通り主張の理由をしっかり考え、ある程度の分量を記述する必要があるでしょう。
英語全体で考えると出題は昨年とほぼ変わらなかったと思います。和訳が量的にも質的にも中心で、ほぼ完答レベルにあることが合格のポイントでしょう。また、昨年の英語は東大理Ⅲレベルの受験生でも抽象的で問題文の英文の内容が難しかったのに対し、今年は出題された英文自体の内容が易しかったことは注目すべきことでしょう。一方、自由英作文は昨年より出題テーマの出題意図がとらえ難く、答えづらかったようです。
理科 2科目で120分 各100点
物理
身近に選択した受験者がおりませんので省略します。
化学
第1問は、例年通りの出題で、基礎の基礎を問う小問集合でした。センターレベルで全問完答すべき問題です。
第2問は、酸化還元の問題で、CODが素材でした。CODは計算が一部複雑であることが多く、慶応医受験生であれば習熟しておく必要があります。しかし、今年は適応量や濃度が文字定数で与えられており、なおかつ鬼門の「ブランクテスト(空試験)」の考慮を要しないという設定で、センターレベルの出題でした。
第3問は、有機構造決定の問題でした。標準的な有機の構造決定に加えて、有機化合物のベンゼン溶液のモル凝固点降下からの出題でした。安息香酸の二分子会合について考慮する必要のある応用問題でした。しかし、この手の出題は多くの受験生が経験している問題であり標準レベルだと思います。
全体に、受験生が数回経験したことのあるようなセンターレベルの問題で、計算量も少なく複雑さもなかった。今後の方針としては、昨年と今年のような出題レベルが続くとは考えられず、それ以前のレベルでの準備が必要だと思います。
生物
第1問は、遺伝の問題でカエルの遺伝が素材になっていました。問題文を深く理解しないと勘違いを生む箇所があり、戸惑った受験生も多かったと思います。問題文に食らいつく力が求められました。
第2問は、細胞の問題で、細胞内外の輸送についてやや新課程に寄った出題でした。
新課程では、細胞内輸送については教科書で深く掘り下げたものがあります。
これを完全に理解できていたかどうかが既述のポイントだと思われます。
これ以外は、多くが知識問題で標準的でした。
第3問は、眼球についての総合問題でした。こちらは知識があれば多くが解答できる問題でしたが、特に老眼の仕組みや視神経欠損など受験生が聞いたことのあるポイントが出題されました。一部の考察でイメージを要求する問題もあり、そこで差がついたものと思われます。
昨年が易しかったが、今年は例年の慶應医学部のレベルでした。知識をつけることも大切ですが、それ以上に題意を正確に理解する力が必要と思います。
論述問題に関しては、昨年よりやや難しかった。基本的な知識が前提になっているので、素早く正確に計算処理ができたかどうかが問われました。
(適塾横浜)
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