2017早慶理工の数学
(1) 慶應大学 理工
例によって、第1問、第2問は完答穴埋問題です。ここで得点基準を満たさなければそれ以後の採点はされずに不合格となるのが、慶應理工の合否基準です。今年度は第1問が間違いやすい小問群であった点、第2問がストーリーは単純だが計算ミスが起こりやすく手間がかかる問題であった点から、数学に力のない受験生にとっては例年以上に厳しかった受験だった。
第1問(1)は、3年前までの受験生であれば、媒介変数の形と結論の「xy」の項の存在から、2次曲線の回転(1次変換)問題としてとらえられる問題でした。早稲田のまね?で角速度まで持ち出していますが、旧課程問題を焼き直した問題です。
第1問(2)は、複素数で扱っているが明らかに整数問題で、整数問題と考えるとこういう出題も面白いなと思わせますが、「複素数平面」の問題がそのために出題されなかったことが、慶應が考える理工学的な視点を表していて早稲田の考える数学観との違いが浮き彫りになりました。
第1問(3)は、逆関数を絡めた出題で逆関数の扱い方(y=f(x)とx=f(y))に慣れているかどうかで、得点差が出る問題でした。
第2問はできないと困ります。計算ミスが起こりやすいのですが、きちんとしのげないと今年の受験はここで終了となったでしょう。
第3問は、やはり慶應理工得意の裏に有名問題を置いた浪人生有利の問題でした。(1)は完答で、(2)~(4)でどれだけ部分点をもらえたかが勝負、捨てる勇気が必要な問題でした。
第4問は(1)、(2)は完答したい問題です。(3)、(4)は時間との勝負でしょうか。
第5問は、一番先にやりたい問題で第2問のように面倒な計算はなく、最後まですっきりとしたやりやすい問題でした。第3問、第4問の後半を捨てて第5問をやれれば合格点が確保できたでしょう。
全体的には、第1問で解答リズムを狂わされると合格点が厳しい出題でした。最初の5分程度で解答計画を立てて取り掛かることの大切さが問われた出題でした。
(2) 早稲田大学 理工
ちょっと時間内で解き切るのは難しい問題群です。慶應理工以上に解答計画を立てて記述していくことが問われたでしょう。そういう点からも第2問は絶対に完答しなければならない問題です。また、問題表現からも先が読める問題ですから、早い段階で手掛けるべき問題でした。
他の問題群は、完答ではなく各問題の中の(1)、(2)を如何に的確に解いたかが合否を分けたと思われます。
第1問は、(1)、(2)までは、今年度の駿台または河合の全国模試の選択問題(第6問)に類似した形の出題なので完答が必要です。(3)は時間的に割に合わない問題です。
第2問は、前述したように問題文から解答のストーリーが見える問題ですから、絶対に完答しないといけない問題です。
第3問は、(1)(ⅰ)は完答、(ⅱ)および(2)、(3)は(ⅱ)の意味を理解して工夫できるかどうかで決まる。せめて(ⅱ)は解きたかったがどうでしたか。
第4問は、一般項 pk(t) の形が見えれば一気に解答が進む。これをスムーズに処理できたかどうかが合否を分けたと考えられる。
第5問は、(3)の設問の仕方からもチェビシェフ多項式の類題であることがわかる。とはいえ解答方針が立てづらい問題で(1)の意味が取れなければ思い切りよく捨てる問題でしょう。他の受験生もほとんど得点できなかった問題だと判断している。
全体的には、数学的に1題1題にこだわりすぎた出題で、残念ながら数学で合否を分ける程の得点差はつきづらかったと思われます。毎年数学の良問が出題される早稲田としては、珍しく不満の残る問題だったように思います。
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