2019入試問題から
[今年度の入試で特に印象に残った問題]
なんといっても、東京工業大学の第4問に尽きます。教科書数学Bの漸化式のところで、「直線による平面分割」の例題が掲載されていますが、それの空間版という形での出題です。(1)の解法のアイデアは教科書例題の拡張であり、(2)、(3)は(1)の一般化という内容でした。正答率というより得点率はどの程度であるかがとても興味深い問題で、文句なく難問ですが教科書から派生する問題と考えると良問で、昔のAO入試で出題してもよい問題でした。
(注) 慶応大学で昭和60年に穴埋型の類題として出題されたという情報を同僚からいただきました。九州大学でも最近類題の出題があったようです。
このような出題傾向は、最近の東京工業大学の明確な特徴といえると思います。2018年の第2問3元の不定方程式問題、2017年第3問の折り紙問題など、今後続けていってほしい出題の流れだと希望します。複素数平面の問題の出題でも、変換的な側面でなく複素数の数としてのとらえ方を問う問題の出題にこだわりを感じています。数学を教える立場から共感を覚えます。
小物でそれほど難しくはないのでしょうが、横浜市立大学第2問(1) (xyz-1)/(x-1)yz<xyz/(x-1)(y-1)(z-1) (x,y,zは2以上の整数)の問題は、分数式の見方として通常の分母をそろえるから分子をそろえるという発想に立って、右辺で(xyz-1)/(x-1)(y-1)(z-1)<xyz/(x-1)(y-1)(z-1)に気づけば簡単でした。(2)の式の形がこの形を使っていることに注目してください。意味深な問題でしたね。もちろん、有名予備校の解答のように、順序性を付加するという王道でも解けますが、発見の喜びは少ないと思います。受験生には、そんな余裕はなかったかもしれませんが。
最後に、今年の日本医科大学前期試験の出題が例年と大きく異なっていたことと問題の意味がとりづらい抽象的な形のものが2題含まれていたことが目立ちました。(受験生曰く) 易しすぎた?昨年の反動なのかもしれませんね。
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